線形混合効果モデル
経時測定データ解析
複数の対象者に対して、ある反応変数を時間の経過とともに繰り返し測定したデータを、経時測定データ(longitudinal data)という。経済学分野では、パネルデータ解析として知られている。
経時測定データ解析の特徴
- 個体間誤差だけでなく、個体内誤差も考慮する必要がある。
- 個体内の各観測値は独立ではない為、相関を考慮する必要がある。
- ランダム化比較試験 (RCT) では個体毎の測定回数は同じであることが多いが、観察研究では個体毎に測定回数がバラバラであることが多い。
線形混合効果モデル
- \(N\)人 (\(i=1, 2, \cdots, N\))の被験者を対象とする。
- \(i\) 番目の被験者は \(n_i\) 回測定されるとする。
- \(Y_{ij}\) は、\(i\) 番目の被験者の、\(j\) 番目 (\(j=1, 2, \cdots, n_i\)) の時点における被説明変数とする。
- この時、線形混合モデルはベクトル表記にて、以下のように表される。
ただし、\(\boldsymbol{\beta}\)は固定効果、\(\boldsymbol{b}_i\)はランダム効果(変量効果)を表すベクトルとした。また、\(X_i, Z_i\)は計画行列である。
ベクトル表現を書き下し、\(i\) 番目の被験者の \(j\) 番目時点の被説明変数 \(Y_{ij}\) を線形混合効果モデルにて表現すると、以下のようになる。
ただし、\(t_{ij}\)は\(i\)番目の被験者の\(j\)番目の(イベント)時点である。以下ではモデルを図で表す。
固定効果とランダム効果
線形混合効果モデルは、固定効果(fixed effect)と ランダム効果(random effect)から構成される。
- 固定効果(fixed effect): population characteristics shared by all individuals
- ランダム効果(random effect): specific effects that are unique to particular individual
非線形混合効果モデル
- データが線形モデルで表せない際に用いる。
- 母集団薬物動態解析、動物の成長曲線等の解析で用いられる。
- 数式では、以下のように書ける。
ここで\(\boldsymbol{\beta}\)は 固定効果、\(\boldsymbol{b_i}\)はランダム効果(変量効果)を表すベクトルとした。また、\(f(\cdot)\)は非線形関数であり、データの性状に応じて適切な関数を当てはめる
引用文献
- 船渡川伊久子、船渡川隆(2015)統計解析スタンダート 経時データ解析. 朝倉書店.
- 田中豊、森川敏彦、山中竹春、冨田誠(2008)一般化線形モデル入門(原著第2版). 共立出版.
- Scott L. Zeger, Kung-Yee Liang, Paul S. Albert. Models for longitudinal data: a generalized estimating equation approach. Biometrics 1988;44:1049-1060.
- 前の記事 : Neural Tangentsによる無限幅深層ニューラルネットワークの構築とベイズ推論
- 次の記事 : 赤外線対応エアコンをインターネットを用いて操作する方法
- 関連記事 :