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統計検定準1級 合格体験記

2022-09-17(Sat) - Posted by 池側 in 技術ブログ    tag:検定試験 tag:Statistics

Contents

    2022年7月9日にCBT方式で統計検定準1級に合格したので、合格体験記を残します。 あくまでも合格体験記なので、合格のためのコツなどはあまり紹介しません。 統計検定を受けた目的や自分が行った対策、合格後の感想などを中心に書いていこうと思うので、受験するきっかけになれば幸いです。

    著者について

    • 医学科5年生
    • 普段は深層学習を用いた研究をしている
      • 機械学習についての理論は詳しくは知らないが、実装して使うことはできる状態
    • 統計検定2級は1年前の6月に取得済み
    • 数学については高校数学+統計検定2級レベルで、線形代数など大学数学は殆ど知識がない状態

    受験のきっかけ

    1. 機械学習の勉強をするうちに、統計学や機械学習の理論的な部分をきちんと知りたいと思ったため。
    2. 研究をする中で、複数の統計的分析手法を使えるようにしておきたいと思ったため。

    使用教材

    4つの教材を使いました。

    1. 統計学ワークブック 統計検定準1級対策の必読書。 1周目は問題を解きつつ全体像を掴む程度に読み、2周目は細かいところまで理解しようと深く読みこみました。(1周目から完璧にしようとすると大体の人は心折れます。) 数式による説明は省略されている箇所も多く、特に線形代数に慣れていない場合は理解が難しいので、必要に応じて他の書籍や動画を参照する使い方が良いと思います。
    2. 統計検定準1級公式問題集 6年分ぐらいの筆記形式(CBT形式ではない)の準1級の過去問が載っている本。 試験直前に4年分ぐらいだけ解きました。 2021年度は非常に難しいので、あまり出来なくても問題ないと個人的には感じました。
    3. 線形代数キャンパス・ゼミ 多変量解析などの分野で行列の知識が必要となるため、補助的に使用しました。 特に主成分分析の理解において固有ベクトルは必須なので、線形代数に苦手意識がある人はやっておいて損はないと思います。
    4. 多変量解析入門 ワークブックの多変量解析のパートの式変形が難解だったので、理解の補助のために使用しました。 数式を用いつつも丁寧に説明を行っているので理解しやすく、多変量解析を理論からしっかり理解したい場合は非常にオススメです。

    スケジュール

    4月初めから7月9日の試験日まで約3か月対策しました。

    • 4月初め~6月中旬:ワークブック1周目。序盤の方は統計検定2級の勉強時の記憶を思い出す作業でした。多変量解析のパートについては途中で数式が難しすぎて心折れたので、ワークブック→線形代数キャンパス・ゼミ→多変量解析入門→ワークブックの流れで学習を進めました。
    • 6月中旬~試験1週間前:ワークブック2周目。こちらのサイトを参考に、出題頻度が高い章から優先的に学習しました。
    • 試験1週間前~試験当日:公式問題集で演習を繰り返しました。

    本番

    問題数

    大問数は22問ほどで、大問1問あたり小問が1~3問ほどあったので、合計35問ぐらいでした。 時間は余ることもなく足りないということもなくちょうど良かったです。

    難易度

    確率と確率分布、統計的推測、多変量解析法、種々の応用の4つから出題されました。 多変量解析、種々の応用の2分野は比較的難しく、ワークブックでも見たことのない問題が多く出ていたため、なかなか自信を持って解答することが難しかったです。 前半2つの分野は確率分布や推定、検定などのパターン化された問題が多く出題され、得点源であると感じました。

    結果

    82点で合格でした。

    感想

    試験を受けて良かった点

    試験を受けて良かった点としては2点あります。

    1点目は統計学や機械学習の手法を幅広く学ぶことができたことです。個々の手法の詳細については執筆時点では既に忘れてしまっていることが多いですが、全体像についてはマッピングがある程度出来ているので、研究などで特定の分析を行う必要に迫られた場合に、その分析に使用できる手法をリストアップし、検討できるようになったのは大きな進歩だと感じます。個々の手法についてはまた必要になった時に詳しく勉強しなおせば良いかなと思ってます。

    2点目は数式への耐性がついたことです。統計学を理論から理解するには大学レベルの線形代数や微積分の知識が必須であり、それらについても試験対策を通じて慣れることが出来たのは非常に良かったです。そのおかげか、今までは論文で数式が出てきたときは面食らうことが多かったですが、合格後はあまりそのようなことが無くなりました。特に医学系の人は普段からあまり数式に接することがないので、数式への慣れは情報系の論文を読む場合には基礎体力として非常に重要であると感じました。

    反省点

    途中からは試験に合格するための勉強になっていた点でした。範囲が膨大であるという統計検定準1級の特性上仕方がない部分もあるとは思いますが、それぞれの分野について深く勉強することが出来なかったです。そのため、研究などで実際に利用するためにはまだまだ勉強が必要であると感じます。当然のことかもしれませんが、研究で使用するといった具体的な目的がある場合は、必要となりそうな分野を集中的に勉強する方が圧倒的に効率が良いですし、そのために統計検定準1級を受検するのは非効率的であると感じました。

    まとめ

    現状研究などで使用する必要に迫られてはいないが、今後のために統計学や機械学習に関する知識を、理論から幅広く身につけたい人にとっては十分受検する価値のある資格だと思います。特に医学系の人にとっては、臨床と研究どちらの道に進んでも統計的手法を用いて何らかの結果を示した論文を読む機会というのは必ずあると思うので、統計学に関する幅広い知識を身に着けることは今後必ず役に立つと思います。