大阪大学医学部 Python会

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2018年阪大理系数学をPythonで解いてみた

2018-11-20(Tue) - Posted by 山田 in 技術ブログ    tag:Python

Contents

    なぜ入試数学をPythonで??

    Pythonについていろいろ調べているうちに、なんとプログラミングで数学の問題が解ける!ということを知りました。

    コードの勉強にもなると思い、じゃあやってみよう!ということで、今回の記事に至りました。

    どの問題を解くか?

    いろいろなサイトでPythonで入試数学を解く記事は見つかります。京大、東大、センター数学などなど。

    ですが、阪大数学を扱っているものはありませんでした。ならば、せっかくなので阪大数学を解こう!ということになりました。これには、自分の受けた試験を再び解く、というのもなんとなく感慨深かったことも理由としてあります。

    ※なお、プログラミングで解くことを重視し、本来の数学的な厳密な議論は飛ばしているため、「入試の解答」とはかけ離れたものになります。以上ご了承ください。

    環境

    • Python3.6.1
    • sympy:sympyはPythonのライブラリの一つで、記号計算を行うものです。

    各問題共通のコードとして、sympyをインポートしておきます。

    In [1]:
    %matplotlib inline
    import matplotlib.pyplot as plt
    import numpy as np
    import sympy as sy
    sy.init_printing() # Jupyter Notebook上で、レンダリングされた結果を表示する
    

    大阪大学2018年 理系数学 第1問

    問

    (1)

    <方針>

    普通に解くなら、$y=$(真ん中)$-$(左)、$y=$(右)$-$(真ん中)、とおいて、
    微分 → 増減表 → グラフ → $x>0$で$y>0$
    という流れで示すのが一般的だと思いますが、sympyでは、簡単にグラフが書けるので、一気にグラフを描いて示します。

    In [2]:
    x = sy.symbols('x')
    

    変数symbols()を用いて変数定義します

    In [3]:
    expr1 = x-x**2/2
    expr2 = sy.log(1+x)
    expr3 = x/sy.sqrt(1+x)
    

    3式をそれぞれexpr1,2,3と名前を付けて宣言します。なお、sy.log()で自然対数 $\log$ を定義できます。 sy.sqrtは平方根です。

    In [4]:
    expr1
    
    Out[4]:
    $\displaystyle - \frac{x^{2}}{2} + x$
    In [5]:
    expr2
    
    Out[5]:
    $\displaystyle \log{\left(x + 1 \right)}$
    In [6]:
    expr3
    
    Out[6]:
    $\displaystyle \frac{x}{\sqrt{x + 1}}$

    念のため、出力して確認。

    In [7]:
    expr4 = expr2 - expr1
    expr4 
    
    Out[7]:
    $\displaystyle \frac{x^{2}}{2} - x + \log{\left(x + 1 \right)}$
    In [8]:
    expr5 = expr3 - expr2
    expr5
    
    Out[8]:
    $\displaystyle \frac{x}{\sqrt{x + 1}} - \log{\left(x + 1 \right)}$

    にて、(真ん中)ー(左)、(右)ー(真ん中)の関数を新たに設定。

    以下ではグラフを描画する。なお、from sympy.plotting import plotが正常に描画をしなかったので、numpymatplotlibを用いました。

    In [9]:
    func_expr4 = sy.lambdify(x, expr4, "numpy") # numpyの関数に変換
    x_expr4 = np.arange(-0.99, 5, 1e-2)
    y_expr4 = func_expr4(x_expr4)
    
    plt.plot(x_expr4, y_expr4)
    plt.axvline(x=0, color="gray", linestyle="dashed", linewidth=2)
    plt.axhline(y=0, color="gray", linestyle="dashed", linewidth=2)
    plt.xlabel(r"$x$")
    plt.ylabel(r"$f(x)$")
    plt.show()
    

    上のグラフから、$x>0$ のとき、expr4$>0$ すなわち、(真ん中)$-$(左)$>0$ が示せる。

    In [10]:
    func_expr5 = sy.lambdify(x, expr5, "numpy") # numpyの関数に変換
    x_expr5 = np.arange(-0.99, 10, 1e-2)
    y_expr5 = func_expr5(x_expr5)
    
    plt.plot(x_expr5, y_expr5)
    plt.axvline(x=0, color="gray", linestyle="dashed", linewidth=2)
    plt.axhline(y=0, color="gray", linestyle="dashed", linewidth=2)
    plt.xlabel(r"$x$")
    plt.ylabel(r"$f(x)$")
    plt.show()
    

    上のグラフから、$x>0$ のとき、expr5$>0$ すなわち、(右)$-$(真ん中)$>0$ が示せる。よって、(1) の上式は示される。

    (2)

    <方針>

    これも普通に解くなら、(1)の誘導を利用して、はさみうちやら微分やらで解けますが、今回は最大値・最小値・極限+グラフで求めます。

    In [11]:
    expr6 = 1/sy.log(1+x) 
    expr7 = 1/x
    
    In [12]:
    expr8 = expr6 - expr7
    expr8
    
    Out[12]:
    $\displaystyle \frac{1}{\log{\left(x + 1 \right)}} - \frac{1}{x}$
    In [13]:
    func_expr8 = sy.lambdify(x, expr8, "numpy") # numpyの関数に変換
    x_expr8 = np.arange(-0.99, 1e4, 1e-2)
    y_expr8 = func_expr8(x_expr8)
    
    plt.plot(x_expr8, y_expr8)
    plt.xlim(-1, 1)
    plt.axvline(x=0, color="gray", linestyle="dashed", linewidth=2)
    plt.axhline(y=0, color="gray", linestyle="dashed", linewidth=2)
    plt.xlabel(r"$x$")
    plt.ylabel(r"$f(x)$")
    plt.show()
    

    $-1<x<1$の狭い範囲では上図のようになり、

    In [14]:
    plt.plot(x_expr8, y_expr8)
    plt.xlim(-1, 1e4)
    plt.axvline(x=0, color="gray", linestyle="dashed", linewidth=2)
    plt.axhline(y=0, color="gray", linestyle="dashed", linewidth=2)
    plt.xlabel(r"$x$")
    plt.ylabel(r"$f(x)$")
    plt.show()
    

    $1-<x<10^4$という広い範囲では、expr8 は$x \to \infty$ のとき、expr8$\to 0$に収束すると予想できます。 0に収束することを以下で示していきます。

    まず、最大値を求めます。

    In [15]:
    from scipy.optimize import differential_evolution
    

    これは、関数の最小値を求めることができるアルゴリズムです。 なお、これはscipyで定義域を指定した大域最小化が行える唯一の方法だそうです。

    In [16]:
    numeric_expr8 = sy.lambdify(x , expr8)
    

    lambdaを使って expr8 を、$x$ を変数(引数)とする無名関数に変換します。

    In [17]:
    minus_numeric_expr8 = lambda x: -numeric_expr8(x)
    

    ここでscipy.optimizeで求められるのは最小値、ということなので expr8 の符号を反転させ、 最小値を求め、のちに最小値の符号を反転させ最大値とする、という方法で求めます。

    In [18]:
    differential_evolution(minus_numeric_expr8, [(0, 1e5)])
    
    Out[18]:
         fun: -0.4999962766596582
     message: 'Optimization terminated successfully.'
        nfev: 477
         nit: 28
     success: True
           x: array([4.46811027e-05])

    という結果になります。

    ここで、fun以下が求めたい最小値なので、expr8 の最大値は$0.49980\cdots \approx 0.5=\frac{1}{2}$ となります。

    次に、expr8 の最小値として極限を求めます。 無限大まで飛ばします。

    In [19]:
    f1 = sy.limit(expr8/x, x, sy.oo)
    

    極限式をf1と置きます。 極限はsy.limit()で求められます。

    In [20]:
    print(f1)
    
    0
    

    すると、無限大への極限は0となることがわかります。

    以上より、$x>0$では$0<y<\frac{1}{2}$の範囲を取りうるとわかります。

    答え

    (1)上記のグラフより
    (2) $0<y<\frac{1}{2}$

    感想

    • 今回は時間の都合で大問1しか解けませんでしたが、今後他のものにも挑戦したいと思います。(第4問の空間図形とか3次元で難しそうですが…)
    • 僕はPythonの文法の勉強がまだ終わっていない状態での今回の記事でしたが、実際に簡単目なコマンドを実行してみる、というのはとても良い練習になり、今後の勉強の理解の助けになると思いました。Jupyterに慣れることができたのも良かったです。
    • (入試問題を見ていると、急に去年の受験時代が思い出され、良くも悪くも感傷に浸ってしまいます。去年のやる気に負けないようにしたい…!)
    • これからも頑張って勉強していきます!